Petit Voyage11
「春を待って」
絵:嶋田幾雄 文:嶋田輝美
列車から駅へ下り立つと、一面の霧
葉を落とした木々がふるえている
風の音だけが町をかけぬけ、霧を払っていった
足を勧めると、教会のとんがり屋根が手招きしている
そばには、小さなカフェ
あたたかいショコラに、ほっとする
迷い込んだ小さな村での、つかの間の時・・・
木枯らしの中に
セーヌを見下ろすエッフェル塔
春を待って
あたたかい陽射しをまって・・・
そして、あなたの訪れを待っている
ホッと時間をゆるめて
カフェでひととき
木々が芽吹いて
風の中に、春の調べが・・・
小舟がゆっくりと進み
おだやかな、ぬくもりを運んでくる
滑車がまわり、橋が動いて
舟が小さな運河をすべっていく
滑車がまわり、橋が戻る
にぎやかに通り過ぎる人々
車も動き出した
誰を待つのか階段の上の彼は動こうとしない
お化粧が終わって、出発の日が来る
明日はどこへ船出しようか
青空の向こう、未来にむけて・・・
ラッタラッタ ラッタター
パーといきましょう
きのうの次は今日
今日の次は明日
そして明後日へと
時は誰にも公平に訪れる
泣いて笑って、いつだって
人生は素晴らしい
枝をすり抜けて、陽光が注ぎ
そよ風の中、木の葉が揺れている
テーブルを並べて、くつろぐひと時
カフェの良い香りが辺りに広がって来た
笑い声 歌声 甘いささやき
おしゃべりが飛び跳ねて、通りを駆けていく
ゆっくり のんびり 過ごしてリフレッシュ
そんな、カフェでのひと時・・・
ロバの背に揺られて
どこへ行くのだろう?
さあ、ゆこう
お前を待つ人の所へ
働き者のロバは、従順に歩いていく
異国の町
異国の香り
謎めいた響きを込めて、
流れていく言葉
エジプトの風があなたへ届いただろうか